末梢動脈疾患
● 概念 従来、閉塞性血栓血管炎(TAO)と閉塞性動脈硬化症(ASO)に大別していたが、 近年は四肢の動脈疾患の存在は脳や心臓の粥状硬化進行を反映し、 単に四肢の循環障害とみなすのではなく、全身性の末梢動脈疾患(PAD)と捉えられる ようになった A.閉塞性血栓血管炎(TAO)(バージャー病) 青壮年の男性に好発し、動脈の分節性閉塞を起こす 静脈にも発赤、疼痛の炎症変化をみることがある 病理学的には血管壁全層に及ぶ炎症所見であり、動脈周辺の繊維性増殖も伴い、 なんらかの自己免疫機序の関与が想定される 脳、心臓などの病変を合併することはないので、生命の予後は良好 B.閉塞性動脈硬化症(ASO) 脂質代謝の異常、動脈内膜の損傷と修復機序の不備といった要因に、加齢変化による 動脈壁の粥状硬化が加わって、狭窄や閉塞を生じる 動脈分岐部や靱帯・筋膜での圧迫部に変化をみることが多い 組織学的には内膜の肥厚増殖から、変性、潰瘍形成、石灰化、さらに血栓なども示す ● 症状 下肢の冷感、しびれ感がある 特徴的な初期症状として間欠性跛行を生じるが、脊柱管狭窄症のそれとは異なり、 休息時の前屈位といった特徴はない 症状の慢性化に伴い、疼痛が強まるとともに末梢の栄養障害を生じ、 わずかな外傷から潰瘍形成については壊死となる ● 診断 末梢血行不全の疑いのもと、脈拍の触診と下肢挙上・下垂試験を行うことで診断可 上下肢での血圧の差、下肢での低下をみれば、診断率が高まる さらにドップラー血流計による血流感知を行う 糖尿病などの合併症を認めるとASOとTAOの鑑別にもなる ● 治療 少数となったTAOを別にして、ASOは生命予後不良と判明 四肢末梢の血行障害は脳や心臓の障害予測因子である 従来のフォンテインの分類では、Ⅰ度(冷感・しびれ感)は保存療法、 Ⅱ度(間欠性跛行)は日常生活上の障害があれば外科的療法を考え、 Ⅲ度(安静時疼痛)・Ⅳ度(潰瘍・壊死)以上は疼痛が伴うので手術が必要 今後、より詳細な統一ガイドラインに沿った治療方針が取り入れられる