脊髄損傷
● 概念 脊髄が損傷されると、損傷された脊髄髄節の支配領域以下の運動、 感覚麻痺と膀胱直腸が生じる 原因としては、脊髄の脱臼、骨折などが多いが、骨傷を伴わない場合もある 男:女=4:1 近年、脊柱管狭窄を有する高齢者が、比較的外傷で、脊椎の脱臼、骨折がないにも 関わらず脊髄損傷となる例が増えている 転移性脊椎腫瘍、脊椎カリエスなど種々の疾患により、急速に脊髄麻痺が生じる場合が あるので、注意を有する 脊髄損傷の重症度は、損傷高位と麻痺の程度により決まる 損傷高位は、損傷された脊髄随筆を指し、上位であればあるほど障害は重くなる C4髄節以上の損傷では横隔神経が麻痺するため、自発呼吸ができず人工呼吸器が必要 麻痺の程度は不全麻痺と完全麻痺に分けられるが、評価法としてはフランケルの分類が 用いられることが多い ● 症状 (1)全身症状 ① 呼吸機能障害 ② 低血圧発作 ③ 消化管潰瘍 (2)局所症状 損傷された脊髄髄節以下、あるいは、それより2~3髄節上位の髄節以下の運動、 知覚障害が生じる 受傷直後は損傷高位以下の反射がすべて消失し、弛緩性麻痺となる(脊髄ショック) 知覚麻痺も損傷髄節以下に生じる 触覚、痛覚、温度覚、深部覚などがすべて侵され、左右もほぼ対称 ただし、ブラウン・セカール症候群のように脊髄の半側のみ傷害された場合には、 損傷側と同側の触覚・深部知覚障害と反対側の温痛覚障害が生じる また、しばしば知覚脱失域に強い疼痛を伴うことがある 排尿障害は受傷直後から出現 ● 診断 外傷による脊髄損傷であれば、病歴および診察による神経評価で、脊髄損傷であることの 診断は容易 損傷された脊椎の高位あるいは損傷脊髄の高位の診断には、脊椎の単純X線撮影、 CT、MRが必須 ● 治療 急性期の治療は、救命のための全身管理が優先 とくに、呼吸管理が重要 脊椎の脱臼、骨折による不安定性がある場合には、頭蓋直達牽引、ハローベスト固定、 脊椎固定術などを行う 全身状態の落ち着く亜急性期から慢性期にかけては、褥創、尿路感染、肺炎、 関節拘縮などの合併症を予防しつつ、自立に向けての早期リハビリテーションを開始